“ 実はよく考えますと、この問題は個別か一般かという規範「形式」の選択問題ではありません。なぜなら、現在において想定外の全く新しい事項については、個別事項での救済は定義上できないからであります。したがって、この問題はそのような不測の状況において著作権を制限すべきかどうかという、規範「内容」の選択問題だと考えられます。これは最終的には法理論というよりも政策的な決断の問題であると考えられますが、仮に日本版フェアユース規定を新たに置くとしても、次の2つの点に留意する必要があるかと思います。
1つは、既存の権利制限規定をオーバーライドするものであってはならないということです。既存の権利制限規定は、個別規定にせよ一般規定にせよ、既に内容と形式についての利益調整を一応は終えているのであり、またもしそれが不十分で不都合が生じるのであれば、当該規定の中で改正を図ることが可能であるし、また予測可能性をできるだけ担保するためにはそうあるべきであると考えます。したがって、新たな日本版フェアユース規定は、既に規定がある事項についてのさらなる拡張的受け皿ではなくて、いまだ規定のない事項についてだけのあくまで補充的な受け皿規定であるべきだと考えます。
留意点のもう一つは、日本版フェアユース規定を置いた後、問題状況が顕在化した時点で、できるだけ速やかに立法対応をすべきだということです。この立法対応が個別規定によるのか一般規定によるのかは、その事項ごとに、先に述べました基準に従ってまた改めて考えるということになります。したがって、日本版フェアユース規定は、立法対応が追いつかない場合に備えてのあくまでも過渡的なセーフティネットと位置付けられるべきだと考えます。
また以上ご留意をいただいたような補充的かつ過渡的な対応を図るための規定であれば、それだけ規定の特定性や安定性が高まるわけですから、日本版フェアユース規定への消極論(条約適合性や法的安定性に対する懸念)への説得の材料にもなると思われます。”
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/digital/dai6/6gijiroku.html
これも島並参考人の発言。基本的には「なるほどにゃ〜」という感じなんだが、ただ賛同までは出来ないという見解。
まず1つ目の方は、俺自身もフェアユース導入と聞いたときにまず気になっていた部分。すなわちフェアユースかどうかを判断する上で、既に存在する個別の権利制限規定はどう扱われるのか。もちろん個別規定によって適法(著作権侵害ではない)とされる行為はフェアユースとなるのだろう。問題は、この規定に適合しなかったり除外されたりする部分(たとえば私的複製から外れてしまう企業内複製や技術的保護手段回避後複製など)は新たにフェアユースか否かの判断を受けられるのかということ。島並参考人が言うように、すでに権利と利用との調整が済んだものとして、当該規定が対象とする利用については重ねて一般規定適用の判断はしないという考え方もあり得る。
しかし、フェアユース規定が個別制限規定ではカバーできなかった利用行為を救済(著作権侵害としない)するために設けられる以上は、個別規定で既に調整済みだよねという立場では問題が生じるようにも思える。加えて、今の個別規定が本当に妥当な調整が行なわれた末のものなのかという問題。たとえば技術的保護手段を回避した私的複製については、フェアユースというものが考慮されていない。一切が私的複製禁止という扱いだ。
正直な話、中山先生がフェアユース導入に乗り気だと聞いていて、先生のフェアユースの考え方はどちらなのかと気にはなっていた。この会合では島並参考人の考え方について反論をしていたりするなど、少し安心できるのかもと思わされた次第。私的複製そのものについても機会があれば尋ねてみたいよね。
2つ目の方は、なるほどなぁと素直に思った。フェアユース導入後の事例で、個別規定に反映させるのに相応しいものは個別規定として立法化するという話。これって栗原潔氏が言ってたフェアユースの効用の一つだったなぁと思い出しながら納得できた。
個別規定には個別規定の利点がある。それは確か。それらの妥当性を常に議論していく必要があると思いながらも、メンテナンスをきっちりしていった上で個別規定の充実も図りたいと思ったりはする。明白な「フェアユース」ならばそれでも良いでしょう。