中部電、浜岡停止巡り調整に苦慮 結論持ち越し
政府要請に法的根拠なし 株主らに説明難しく
- 2011/5/8 2:02
- 日本経済新聞 電子版
菅直人首相による浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の全面停止要請に対し、中部電力は結論を持ち越した。原発から火力発電へのシフトは業績悪化や電気料金の引き上げにつながりかねない。「首相の言葉は重く、命令に等しい」(中部電首脳)とはいえ、法的根拠のない「要請」を受け入れるには、株主や利用者を納得させる合理性が必要で調整に苦慮している。
浜岡原発を巡る主な出来事
1976年
3月1号機が営業運転開始
2009年
1月1、2号機が廃炉を前提に運転終了
10年11月3号機の定期検査開始
11年
2月23日5号機の定期検査終了、営業運転再開
3月2日4号機の定期検査終了、営業運転再開
11日東日本大震災が発生
15日防波壁設置など津波対策拡充を表明
23日6号機の着工を16年以降に遅らせると表明
4月20日緊急安全対策を経済産業省原子力安全・保安院に報告
28日水野明久社長、12年3月期業績見通しについて、定期検査で運転停止中の3号機の7月再稼働が前提と表明
5月5日海江田経産相が視察
6日菅首相が運転の全面停止を要請
7日臨時取締役会で要請受諾の結論持ち越し
菅首相は「中長期の(津波)対策を確実に実施することが必要」との理由から、運転停止を求めた。ただ、浜岡原発は国の耐震安全基準を満たし、福島第1原発事故を受けて経済産業省が電力各社に指示した緊急安全対策にも対応している。そのため首相の要請に法的根拠はなく、中部電の対応を難しくしている。
■電気値上げも
浜岡原発の停止でまず不利益を被る恐れがあるのが株主だ。原発を止めた中部電が電源確保で頼れるのはコストが高い火力発電しかない。発電設備の稼働率を引き上げるほか、旧型で効率が低いため休止中の火力発電所について運転を再開する公算が大きい。
2012年3月期の燃料費は当初予想の前期比25%増の8500億円を上回り、1兆円を超える見通しだ。中部電の試算では、代替電源をすべて火力で賄うと燃料費だけで1日7億円のコスト増となり、利用者に新たな負担を求める可能性もある。12年3月期の営業利益予想は1300億円。コスト削減や値上げがなければ約半年で利益を打ち消す計算になる。
今期の業績悪化は避けられそうになく、最終赤字を計上すれば年60円を維持するとした配当方針も実現が不安視される。法的根拠のない要請に応じるにあたり、株価下落や株主代表訴訟などのリスクにも直面する。
■経済回復に水
自動車や工作機械をはじめ、製造業が集積する中部地方の利用者に対しての影響も懸念材料。中部電は発電電力の8割を火力発電で賄うが、燃料の液化天然ガス(LNG)や石油の調達は長期契約が主流のうえ、東京電力や東北電力も停止した原発の代替電源として火力の比率を高めており、とりわけ電力需要が膨らむ夏場の十分な燃料調達には不安が残る。
三田敏雄会長は7日の取締役会後、0泊3日の予定でカタールに向かった。政府関係者らと会い、LNG調達量の上積みを求める。
中部電の販売電力量は5割近くを産業用が占めている。万が一供給不足になれば、大口利用者に供給を制限する事態も予想される。東日本大震災の影響で完成車工場の稼働率が5割前後にとどまっているトヨタ自動車は、夏場から稼働率を徐々に上げ、年末には震災前の水準に回復させるシナリオを描く。中部電が供給制限を迫られると、地域経済の回復に水を差すことになりかねない。
中部電の供給計画によると11年度の供給力は2999万キロワット。約360万キロワットを占める浜岡原発を停止しても、想定する夏のピーク需要(2560万キロワット)は上回っている。
政府は浜岡原発を停止しても中部地域で計画停電は必要ないとの見方を示しているが、猛暑になれば電力不足も懸念される。中部電は夏場の安定供給が可能だという見極めがつくことを停止要請を受け入れる大前提としている。
突然の停止要請に対する抵抗感も中部電の社内では強いようだ。首相が6日の記者会見で自ら「指示や命令という形は現在の法律、制度では決まっていない」と認めたが、中部電幹部は「要請の根拠などをきちんと説明してほしい」と訴える。
(Source: nikkei.com)
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